食堂のおばちゃん*山口恵以子…★4.0
食べることが大好きなわたしはこういう食事や料理がテーマの本が大好きです。
大きな波はないものの、安定して安心してほっこり読める作品になります。
あらすじ
「はじめ食堂」で働く一子と嫁の二三。
心が落ち着く家庭料理を求め、昼も夜もその食堂を訪れる人々との関わりを描く人情小説。
食べることを通して、様々な人生を描くまさに食べるように読める作品。
読んでいるとお腹がすいてくる!
食をテーマにした小説で、しかもそのメニューが家庭でも簡単に出来そうな材料と手順なのが魅力。
この小説を読んでいると「食べたい」だけでなく「ちょっと作って食べてみようかな」という気分になってくる。
最後のページには出てきたメニューのレシピが改めて簡単に載っているので、ぜひ今度いくつか試しに作ってみようと思う。
そしてはじめ食堂の「みんなの家」感がとにかくすごい。
はじめ食堂をやっているのは、姑と嫁の二人。
二人とも元々は他人で、嫁姑は一般的には分かり合えず仲があまりよくない人たちが多い続柄。
ただこの二人は本当の親子さながらの仲の良さで、食堂を訪れるお客さんとも心地よい距離を保っている。
だからこそお客さんは居心地が良くて自然とそこに足が向いてしまうのだろう。
暖かい空気の中で食べる家庭料理に勝る食べ物は知らない。
食べることは生きること。
はじめ食堂にやってくるお客さんは男女さまざまな年齢の方が集まっていて、それぞれにそれなりの事情がある。
何かに思い悩んでいても、はじめ食堂で美味しい食事をする事で、命のメーターを満杯にして帰っていく。
詳しいことは分からないけど、「美味しい!」という思いは幸福体験として前頭葉が活性化されるかもしれないし、いわゆる「心にぽっかり空いた穴」は胃が十分に満たされることで何かしら埋まる仕組みでもあるのかもしれない。
身体の為にも、食べる行為は生きる事に直結している。
そんな大切な食べるという行為を、このはじめ食堂で行えるお客さんたちがちょっと羨ましい。
こんな食堂がわたしの家の近所にないかな?