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70年分の夏を君に捧ぐ…★4.1

 

70年分の夏を君に捧ぐ (スターツ出版文庫)

70年分の夏を君に捧ぐ (スターツ出版文庫)

 

 

時を越えて二人が入れかわる。

あれ、どこかで聞いたような…??

だけど話の舞台が、原子爆弾が落とされる直前の広島という緊迫した設定で、既視感はなく読むことができました。

戦争、平和というワードに無関心だったり、偏見を抱く若い方も多いかと思います。
そんな方が戦時中のことやそこで生きていた日とのことを考える、取っ掛かりにもなり得る作品ではないかと。

 

 

感想・レビュー

 

後半は手に汗を握る思いで読み進めました。

 

放射能を浴びない所まで行くなら周りに知らせるよりもう早く逃げて!!!

と自分の事しか考えてないわたし丸出しでした。

 

最後まで千寿一家がなんとか生き残って、現代で百合香も存在する展開を期待したのですが…

あんなに優しかった家族がいなくなってしまった残酷さに読みながらうちひしがれました。

 

ただ、辰雄がゲイリーの息子として生き残っていた展開は考えつかず

千寿と入れかわっていた百合香のことをちゃんと覚えてて再会出来た所がこの作品の中でも一番感動した部分です。

 

 

「70年分の夏を君に捧ぐ」

このタイトル、誰に対する誰の言葉なのかわかりますか?

 

私は作品を全て読み終えてから気がつきました。

このタイトルは百合香か千寿の感情だと思っていたのですが

 

これはゲイリーの言葉です
70年、夏が来る度に千寿を待ち続けたゲイリーの。
 

キスさえせずに大切にしていた愛する人を亡くし、70年。

長いですよね。

とてつもなく

 

ゲイリーにとって千寿への気持ちは永遠であり、きっと魂だけになっても変わらないのだろうと思えます。

 

千寿は70年後のゲイリーを看取り、それから昭和20年の時代に戻ってゲイリーに看取られます。

きっと生まれ変わらずにゲイリーにまた会えるのを待っていてくれたんじゃないかな。

 

魂になってようやく一緒になったゲイリーと千寿の二人で、現代を生きている百合香を見てにっこり笑っていてくれてるはず。

 

 

戦争について誰かと話をすることがない世代の方に、ぜひ手にとって欲しいと思います。