SMOKE …★4.3
引用元:movies.yahoo.co.jp/movie/スモーク/27030
ブルックリンに住む五人の登場人物にスポットを当て、彼らの日常や心情を描いた作品です。
この映画を見終わった後の今の気持ちを上手く文章に表すことが出来ずにいます。
良い映画を見た後のあの感覚に襲われています。
一人で「良かった…」と思わず口にしてしまいました。
感想・レビュー
出てくる人物たちがそれぞれとても人間味があります。
良いところだけでなく、人間らしい不完全さや不器用さが描かれていて、
よりそれぞれに親近感を感じる作品でした。
「SMOKE 」という題名のためか、作品の要所要所で煙草を吸い煙を燻らすシーンが出てきます。
わたしは非喫煙者ですが、この作品の中で喫煙シーンを見ると、
登場人物だけでなく自分自身の人生の重さ(悪い意味でなく)や憂いを感じました。
「世の中で大切なものは、煙のようなもの」とこのDVDの背表紙にあるように、
大切なものは実態が掴めず上手く言葉には出来ない。だけと確かにそこにあって、すぐ消えてしまう。
「SMOKE 」というタイトルがあまりに映画にぴったりで素晴らしすぎて感動しました。
人間らしい面を大切にしている作品ですが、5000ドルの下りはとても素敵でした。
泥棒が落とした5000ドルを持ち去っていたラシード。
彼は自分の失敗で迷惑をかけたバイト先の店主オーギーに損害額の5000ドルを払いました。
その5000ドルは最終的にオーギーは昔の恋人ルビーにそのまま渡します。
自分の子供かはっきり分からない娘の更正のために。
5000ドルという大金を人から人の手に、悪意や企みなく渡っていく様は
人間捨てたもんじゃないな
って思わせられました。
あとはポールにオーギーが話して聞かせたクリスマスストーリー。
彼が盗んできたカメラは
きっと今オーギーが日課としている毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮る(14年間!)時に使っているカメラなんだなと分かったときの「あ…」感の凄さ。
カメラを盗むのは悪いこと。
悪いことなんだけど、なぜかオーギーを責める気にはなれません。
彼はその事を心の底から悔いていることが分かるから。
そこなんですよね。
この作品の登場人物達は、それぞれ良いとこもあるけど「えっ!!」と思うような人間くさいところも描かれてるんです。
盲目の老婆からカメラを盗んだオーギー。
自分で招いてラシードを泊めておいて、人の気配が四六時中することに耐えれず「いつ出ていくんだ?」と言っちゃうポール。
ラシードが自分の息子だと気付いても認められずに涙ぐみながらラシードを叩いた父親。
ひどい言葉で母親を罵ったフェシリティ。
それぞれの複雑な心情も、表情やシーンの空気感からひしひしと伝わるので、リアリティーを感じて共感してしまうんです。
そして何より作品の最後、
オーギーがポールに語ったクリスマスストーリ
が台詞なしで流れるのですが、それが最高に良かったです。
人の暖かさ、心の寂しさ、善と善、そして悪。
心に少し傷を残しながら、だけどじんわりと終わる。
なんというか、とにかく良かった。
良かった。以外に言葉が見つからないです。
こういう映画を「良い」と感じられるようになったのは、少なからず自分の人生を積み上げてきたからかなあとも思えました。
行間から多くを感じることができる、とにかくとても良い映画です。